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毎日新聞2013年12月28日(土曜)朝刊・くらしなび面にSWASHのことが載りました!
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性労働者の‘ 現実’'支えたい 2団体が小冊子

孤立防ぎ環境改善を

安全な労働環境の確保や子育ての悩み、借金--。困りごとがあっても、職業を公言しにくく孤立しがちなセックスワーカー(SW、性労働者)を支える動きが少しずつ広がっている。今秋、関西を中心にSWに寄り添いながら活動する2グループが、支援のための小冊子を相次いで発行した。どのような視点が必要なのか、メンバーの活動を取材した。【反橋希美記者】

■「保護更生」ではなく

警察白書によると、2012年に届け出のあった性風俗店は全国で約3万店に上る。ソープランドなどの店舗型、ホテルや個人宅でサービスを提供する無店舗型などがあるが、近年は「店側の監視が行き届かないため危険度が高い」とされる無店舗型が急増。価格競争の激化でサービス料の低下も進み、SWの労働環境の悪化が指摘されている。

「何か悩みごとはありますか」。11月初旬、大阪市内にある無店舗型風俗店の待機室で、SWの支援団体「SWASH」代表の要友紀子さんが、女性らに語りかけていた。

スウォッシュは10月、気をつけたい性感染症や、感染症を防ぐサービスの提供などを分かりやすく図示した「完全はたらきかたマニュアル」(30ページ、A5)を発行。この日は、日常の訪問支援活動で信頼関係をつくった風俗店で、マニュアルを基に講習をしていたのだ。

講習後の雑談では「ホテルの部屋のドアが部屋代を入金しないと解錠されない自動ロック式なので、何かあったときにすぐに逃げ出せず怖い」という相談も。参加した女性(29)は「安全なサービスについて同じ店の女性とも情報交換したことがなかった」と話した。

スウォッシュはSW当事者や支援者で、1999年に結成。SWの安全な労働環境づくりを目指し、厚生労働省のエイズ対策事業の研究班に参加するなど、多くのSWの聞き取り調査や研究、相談支援にかかわってきた。

今回のマニュアルは大阪府のエイズ対策事業の委託を受け、1万部作成。無料法律相談など借金解決のための相談先や、メンタルヘルスの情報まで網羅する。外国人SWも読めるよう中国語、韓国語、英語の翻訳付きだ。

要さんは「貧困、離婚など生活困難からSWになる人も多いが、支援が『保護更生』の視点だと当事者は離れてしまう。今働いているSWのための労働環境改善について関心を持ってほしい」と話す。

■月一で語り合い

一方、SW当事者による自助グループ「SWEETLY(スウィートリー)」は10月、NPO法人「HIVと人権・情報センター」関西支部(JHC、大阪市淀川区)と、「セックスワーカー×支援者サホートハンドブック」(26ページ、A5判)を2000部発行した。支援者向けに「私にはできない仕事です」などSWを傷つけてしまう言葉や、感染症の情報を伝える際のポイント、SWを支援している 民間相談機関、SWに関する法律などを紹介する。

95年に発足したスウィートリーは月に1度、当事者で日常のできごとを語り合う「カフェ」を開き、その中で出てきた相談を弁護士やNPOなどにつなげてきた。今春、JHCの依頼で、SWへの理解を深めるワークショップを開催。まとめとしてハンドブック発行を企画した。

スウィートリーで活動する御苑生笙子さん(48)は、シングルマザーとして1児を育てながら約10年前までSWとして働いた。当時は「相談機関に行っても、まず『そんな仕事やめなさい』と言われ、実際に困っていることに対応してもらえないことがあった」と振り返る。JHC関西支部の尾澤るみ子代表は「ハンドブックは、自分のSWに対する偏見に気付きつつも、どう接していいのか分からなかった支援者たちに役立っている」と語る。

SWの調査や支援を行っている神戸大学の青山薫准教授(社会学)は「約10年前に比べ、生活のために性風俗業界に入る人が増えているが、社会の支援は倫理的な議論が先に立ち、進んでいない。SWが他の仕事をする人と同じように扱われ、問題があれば相談しやすい環境をつくる必要がある」と話している。

スウォッシュのマニュアルは府内の風俗店に無料で配布しており、今年度中にインターネットで公開予定。問い合わせはメール(mail.swash@gmail.com)。スウィートリーのハンドブックも無料(送料別)だが、改訂版の発行を企画しており、1口1000円からカンパを募っている。問い合わせはメール(sweetly.cafe@gmail.com)。