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セックスワークにおける労働条件・職業満足度調査(ナショナル・アグリー・マグズ(NUM)とリーズ大学の共同研究)

以下、「セックスワークにおける労働条件・職業満足度調査」の概要の翻訳。
完全版は、以下のpdfに収録されており、ダウンロードできる。
Welcome Trust - Working conditions and job satisfaction survey(pdf)

 この調査は、ウェルカム・トラストから資金提供を受けて実施された。主任調査担当者であるリーズ大学のTeela Sanders博士が、Laura Connelly及びLaura Jarvis Kingと共に調査に当たった。この研究はナショナル・アグリー・マグズのスキームと連携して実施された。

タイトル:英国のセックスワーカーの労働実態及び経験の全体像を描くための試験的パイロット研究

目的:本パイロット研究の目的は、ある程度の中核的な人口動態情報[人種、年齢、教育レベル、収入などをまとめた統計情報]を得ると共に、労働満足度、スティグマ、孤立、安全、支援サービスとの連絡、経験した犯罪などの問題について質問することにある。その後、基本情報を抽出するために本調査の分析が行われる。ESRCから資金提供を受けて2015年9月から Teela Sanders博士とJane Scoular教授によってさらに規模が大きな混合方式による研究が開始される予定であり、これらの基本情報に基づいて、この研究の設計を行うことができよう。

調査期間:2014年11月から2015年1月末までの12週間にわたって行われた。

調査の対象:ナショナル・アグリー・マグズの会員(会員以外は調査の対象とはしなかった)。ナショナル・アグリー・マグズの会員は、あらゆるジェンダー・アイデンティティの、あらゆる分野で働く、さまざまな経験を備えたセックスワーカーで構成される。

サンプルのサイズ:240人

サンプルの社会人口動態的な特徴:
•女性82%(n=196)、男性12%(n=28)、トランスジェンダー5%(n=12)、その他1%。
•年齢:18歳~63歳。
•46%が自分のセクシュアリティを「バイセクシュアル」としている。
•240人の回答者のうち、184人(77%)が養育している子どもはいないと述べた。
•38%(n=90)は学士号を持っており、17%(n=40)は大学院を修了している。
•109人の回答者(全回答者の45%に相当する)が、セックスワークと別の仕事を兼業していると述べている。106人の回答者(全回答者の44%に相当する)は、セックスワークを別の仕事と兼業していない。
•回答者の過半数以上(n=138)にとって、セックスワークが唯一の収入源ではない。
•最も一般的なセックス市場は「独立(仲介者を経由しない)エスコーティング」であり、214人(89%)の回答者がこのタイプのセックスワークを行っていた。その次に一般的なものは「ウェブカメラ」(n=44)であったが、これは回答者の18%にしか相当しない。その次は「電話」(n=30、13%)となっている。
•回答者の働く場所として最も一般的な場所は「客先への出張」であり、240人の回答者のうちの157人がこの方法で働いていた。次に一般的な場所は自宅であった(n=128、53%)。
•大半の回答者(n=158、66%)が、来年も今と同じ方法で働くだろうと述べた。

教育
•97%超がGCSE[一般中等教育修了証:中学卒業に相当する]、Aレベル[中等教育の修了証で、大学入学のために必要である]又はそれに相当する資格を備えていた。
•調査対象者のうちの90人(38%)が学士号を、40人(17%)が大学院修了資格を持っていた。

職業経験
•172人(71%)が以前に、医療、公的介護、教育、保育又は慈善事業で働いていた。
•その次に多い前職は小売業であり、81人(33.7%)がこの業界で働いていた。

主な調査結果

•職業満足度
・職業満足度は高い。仕事の説明をするように求められた際に、回答者は一般に、肯定的又は中立的な言葉を選んだ。セックスワーカーの91%が、自分の仕事は「柔軟性がある」と述べ、また66%が自分の仕事を「おもしろい」と述べた。回答者の半数以上が、自分の仕事は「やりがいがある」、「熟練を要する」、「社交的」、「エンパワーされる」と考えている。

・その一方で、比較的少数の回答者は、その仕事に否定的な用語を使用した。自分の仕事は「非人間的」だと考えているのはわずか15%であり、また14%が自分の仕事を「搾取的」だと見なしている。半数以上(n=126、52%)が、自分が望めばセックスワークをやめられると感じていると述べた。ただし回答者の4分の1未満(n=57、24%)はセックスワークをやめられないと感じていると述べた。

・セックスワーカーに、自分の仕事の中で楽しいことと楽しくないことを自分の言葉で3点挙げてもらった。その結果は次のとおりである。

プラス面
1.金銭的な側面。
2.柔軟性のある労働時間。
3.セックスを売る時間、場所及び方法を決定する上で選択肢と自由がある。

マイナス面
1.時間の無駄になるような客。
2.セックスワークに関するスティグマと否定的な態度。
3.危険/暴力。

•スティグマ:
・回答者の71%が、セックスワークの際に、少なくとも「時たま」スティグマを経験している。

・このスティグマによって多くの場合、セックスワーカーは自分の仕事について取り繕ったり嘘をついたりして、ばれることを恐れて暮らすことになる。

・またスティグマが家族との関係や恋愛関係(の可能性)に影響を及ぼすことも明らかになった。

•犯罪/暴力:
・犯罪に関する懸念のレベルには大きな幅があるが、49%は「かなり心配」又は「大いに心配」していた。

・回答者のほぼ半数(47%)が、自分のセックスワークの際に犯罪の犠牲者となったことがある。

・最も一般的には、脅し又は嫌がらせの(携帯電話の)テキストメール、電話及び電子メールと、言葉による辱めの形を取り、回答者のそれぞれ36%と30%がこの種の虐待を経験している。

・レイプ、暴行、強奪など、それ以外の形態の暴力も経験されているが、それほど一般的ではなかった。研究結果によって既に示唆されているように、屋内セックスワーカーは一般に、屋外を拠点としたセックスワーカーよりも暴力を経験していない。

・回答者のほぼ半数(49%)が、犯罪を報告しても警察が真面目に取り上げてくれるかどうかに「確信がない」又は「大いに確信がない」のいずれかを回答した。

・回答者は、自分の安全を高められる方法としては、セックス産業の合法化又は非犯罪化を通じた方法が一番であると考えている。回答者の42%が、これらの政策の変更が安全性を向上させる方法だと提案している。

本調査の検討事項?
 我々は、労働条件と職業満足度を主な調査対象としたが、セックスワークの安全性にも注目した。我々の希望は、英国内でインターネットを使用するセックスワーカーの労働条件の現実的な姿を得ることであった。その目的は、セックスワーク以外の生活、仕事の履歴及び現在の規制面から、セックスワーカーが仕事にどのように取り組んでいるかについての知識をさらに深めることであった。特定のイデオロギーに沿った決めつけに基づいてセックスワーカーの労働条件に関するさまざまな仮定を立てたり、判断を下したりするのではなく、まずセックスワーカーに質問することが重要である。

これらの調査結果から生じる提言?
 調査結果は、「スウェーデン・モデル」への動きがセックスワーカーの安全にとって害になることを一層示す証拠となっている。我々は、セックスワーカーが団結して合法的に労働できるようにするよう提言したい。セックスワーカー自身が、これを自分たちの安全を高めるための第一の方法だと考えているからである。セックスワークに根を張るスティグマを最小限にし、それによって、偏見と判断がセックスワーカーにもたらす害を減らすためには、社会の振る舞いを変える必要がある。その中心として非犯罪化を伴う政策が提言されるべきである。その目的は、法執行[警察の手入れ]の恐怖をなくすことによって警察との関係を改善し、搾取的な状況へと資源を回すことにある。

サンプル数は多いが、このサンプルは、より「エンパワーされた」セックスワーカーに偏っているのか?
 実際に回答者の大半(89%)は独立エスコーティング分野で働いている。現場での研究全体を見ると、セックスワーカーのおよそ70%が屋内で働いていると推定されていることから、本研究は確かに、セックスワーク全体を考察するために使用されている多くの研究よりも実態を反映している。また我々は、このグループがより「エンパワーされている」と無批判に仮定することに、注意しなければならない。多くの面でこのグループはセックスを売ることを労働と捉えているものの、現在の政策が実際には無力感を強め、彼らが経験しているスティグマを維持していることは明らかである。非犯罪化への動きが、これを緩和するために役立つだろう。
 ストリート・セックスワーカーはセックスワーカー全体から見てごく少数であるにもかかわらず、多くの研究では、女性のストリート・セックスワーカー又は医療・公的介護支援サービスにアクセスしているセックスワーカーが主な調査対象となっている。本研究では、はるかに幅広い層のセックスワーカーを取り上げている。女性の回答者の比率(82%)も、より幅広い層のセックスワーカーの実像とジェンダー内訳の見積りを、よりよく反映するものである。
 この調査は、セックスワークに満足していないセックスワーカーに不利な方向に偏っているのではなく、主に英国で最大のセックスワーク分野である独立エスコーティング分野からの広範な見解を反映しているのである。

本研究の主任調査担当者であるTeela Sanders博士は、次のように述べている:
「本研究では主に、セックスワーカーの労働条件と、セックスワーカーの職業満足度を扱っている。またセックスワークの安全性についても取り上げている。我々は、英国で働く全てのジェンダー・アイデンティティのセックスワーカーの労働条件の実像を捉えたいと希望している。英国のセックスワーカーのおよそ70%では屋内で働いているため、セックスワーク全体を考察するために使用されている他の多くの研究よりも、本研究の方が実態を反映している。多様なセックスワーカーに、回答を寄せるように依頼がなされた。
回答を寄せた人の多くはエスコーティング分野で働いているが、我々はセックス産業の他の分野で働いているセックスワーカーからの回答も、少数ではあるが入手した」。