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セックスワーカーの権利を支援するフェミニスト・マニフェスト

ヨーロッパのセックスワーカーの権利に関する国際委員会が、3/8の国際女性デーに際して作った「セックスワーカーの権利を支援するフェミニスト・マニフェスト」(https://feministsforsexworkers.com/)の翻訳です。ヨーロッパ、中央アジアの129のフェミニスト団体、クィア団体、移民団体、セックスワーカー団体等が、このマニフェストに賛同署名しています。

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 このマニフェストの署名者であるわたしたち、すなわち、女性の権利、フェミニスト及びセックスワーカーの権利を求める組織及び団体は、セックスワーカーの自己決定権を支持し、セックスワークを仕事と認めると表明する。欧州や中央アジアにおいて、女性の権利、リプロダクティブ・ライツ、ジェンダー平等が脅かされている現在、わたしたちは、構造的、制度的暴力から、物理的、対人的な暴力まで、多種多様な形態の暴力に見舞われているセックスワーカーと連帯する。セックスワーカーが直面している組織的な抑圧に対処するため、わたしたちは全てのフェミニストに対し、運動の中にセックスワーカーの声を組み込み、その声を拡大することに、そしてセックスワーカーの権利にとって有害であると証明済の法的枠組みの促進を阻止することに、その資源を集中するよう求める。

 わたしたちは、フェミニスト運動に対して、家父長制社会、資本主義社会、白人至上主義社会の内部にジェンダーの不公平を位置づけ、トランスの人々やセックスワーカーを包摂するよう訴える。わたしたちの社会の刑事司法制度は抑圧的なものであり、ゆえにわたしたちは、取り締まりを行い、罪に問い、刑務所に収監する活動を増強することが、女性、トランスの人々への暴力とジェンダーの不平等を解決する唯一の手段ではないと考える。わたしたちは、経済的な不平等と、アクセス可能な社会保障網やサービスの欠如とを含めた女性及びトランスの人々への複雑な暴力に対するコミュニティの介入、長期的な組織化及び動員に信頼を置く。

 1.​わたしたちは、セックスワーカーを、自分自身の生活及びニーズにおける専門家だと認識する。フェミニズムは、過去に常にそうしてきたように、仕事と身体に対する女性の行為主体性と自己決定権を擁護しなければならない。セックスワーカーが例外とされるべきではない。

 2.​わたしたちは、セックスワークに従事するというセックスワーカーの決断を尊重する。わたしたちはフェミニストとして、セックスワーカーが「身体を売る」又は「自分を売る」というミソジニー的な言説を拒絶する。セックスは自分を提供することだ、あるいは自分の一部を失うことだと暗示するのは、根本的に反フェミニスト的なものだからである。女性はセックスによって価値を損なわれない。さらにわたしたちは、セックスワーカーが「女性、セックス又は愛情行為の商品化」に寄与しているといういかなる分析も拒絶する。わたしたちが他の女性に害をなすとして非難するのは、家父長制やその他の抑圧的なシステムであって、セックスワーカーではない。

 3.​わたしたちは、セックスワーカーが同意したと言明する力があると断言する。セックスワークにおいて同意など不可能だと言うことは、セックスワーカーから自分に何ができて何ができないかを決める能力を奪うことであり、暴力にはっきりとノーという力を奪うことである。顧客はセックスワーカーの身体又は同意を「買う」のだから、顧客はセックスワーカーに対してやりたいことができるという考えを広めることは、セックスワーカーの現実の生活/生命に危険な影響を及ぼす。さらにこの種の考えは、全てのセックスワークを暴力の一形態と見なすことにより、暴力に対処するという名目でセックスワークを取り締まる方向につながりかねない。しかし実際には、セックスワークの取り締まりによって逆に、セックスワーカーは暴力に見舞われやすくなる。

 4.​わたしたちは、人身売買の犠牲者の人権と労働権の保護を完全に尊重して、彼らへの現実的な助力と支援を提供する措置を擁護する。それゆえわたしたちは、移民とセックスワークと人身売買を同じものとして扱うことに反対する。この同一視の結果、特に移民のセックスワーカーは、警察のいやがらせや手入れ、拘束及び強制送還の対象となっており、暴力と搾取にさらされやすい不法な労働環境に追いやられている。

 5.​わたしたちは、セックスワーカーに対するあらゆる形態の暴力を根絶するために闘う。セックスワークは、性的暴力の一形態ではない。しかしセックスワーカーは、犯罪化や、セクシズム、売春婦嫌悪、ホモフォビア、トランスフォビア、レイシズム、階級差別などの往々にして入り乱れた抑圧が原因で、性的な暴力や親しいパートナーからの暴力をきわめて受けやすい存在となっている。抑圧と犯罪化により、セックスワーカーは、個人、社会サービス、警察、入管職員、そして司法係者からの暴力にさらされやすくなる。セックスワークを本来的に暴力的なものと見なし、セックスワーカーの同意を無効なものと見なすことは、セックスワーカーへの暴力の常態化を助長する。

 6.​わたしたちは、生活のあらゆる側面でミソジニーをなくすために、日々活動している。しかしミソジニーは、セックスワークの原因ではなく、たとえば化粧をするかどうか、中絶をするかどうか、セックスを売るかどうかという、女性の行為と選択への反応として生じる。わたしたちは、ミソジニー的感情や行為を問題として告発すると共に、ミソジニーを「誘発する」振る舞いを変えろ、あるいはやめろという要求を拒絶する。ミソジニーを誘発すると思われるという理由でセックスワークをやめさせようとすることは、(セックスを売るなどの)一部の女性の行動が本質的にミソジニーの対象となるに値すると言う人々に同意することである。

 7.​わたしたちは、移民の権利を尊重する。移民の女性は、仕事につく手段が限られており、社会保障にはほとんど又は全くアクセスできない状況にある。避難所を求めてきたこれらの人々の一部は、生きる糧を得るためのきわめて限られて選択肢の中から性的サービスを売っている。買春の犯罪化と他の形態のセックスワークの犯罪化によって、移民のセックスワーカーは、警察の暴力、逮捕、強制送還の脅威に絶えずさらされ、司法へのアクセスと救済の権利を拒否されることになる。買春の犯罪化は、生存のためのそれ以外の手段を与えないままに、移民のセックスワーカーの収入を奪うものである。

 8.​わたしたちはLGBTの権利を支持する。LGBTの人々は、その家族から疎外され、シスジェンダー性差別主義的、異性愛規範主義的な社会構造内で教育や雇用にハンディキャップがあるために、LGBTの人々、特にトランス女性にとってしばしば、セックスワークがごくわずかな、経済的な雇用機会となってしまう。セックスワーク禁止法は、社会的排除の複雑な側面に対応したものではないため、LGBTやトランスの人々の利益とはならない。これは、トランス女性に特に当てはまる。セックスワークを犯罪化する法律は、その当人がセックスワーカーであるかどうかとは関係なく、トランス女性というグループに目を付けて迫害するために特に利用されるためである。

 9.​わたしたちは、セックスワークの完全な非犯罪化を求める。スウェーデン・モデルやその他のあらゆる形態のセックスワーク犯罪化がセックスワーカーに害をなしているという、強力な証拠が存在している。スウェーデン・モデルにおいては、セックスワーカーは貧困に陥り、顧客との交渉力を失い、安全のために共同で仕事をしたために犯罪者とされ、立ち退きと強制送還の対象とされている。非犯罪化により、セックスワーカーの労働者としての組織化が可能とすることで、セックスワーカーが搾取的な労働慣行と暴力の犠牲となりにくくなる。

 10.​わたしたちは、女性の労働の非正規化の増大に反対する。資本主義と家父長制のもとにある西側諸国では歴史的に、「女性的」と見なされてきた女性の仕事(家事労働、ケアワーク、セックスワーク、感情労働)は、過小評価され、不当に低賃金であるか、あるいは完全に不可視化された無報酬のものとされてきた。世界中の女性は、セックスワーカーを含め、より賃金が低く、より不安定な職業についている。すなわち、処罰の対象となる仕事、季節的又は一時的な雇用から、内職、フレックス及びパート労働まで、下請け、フリーランスとして、あるいは自営業として働くに至るまで、女性たちは搾取的な条件で働いている。セックスワークは、主に女性を、中でも移民の女性や有色人種の女性を連想させるという点で、他のタイプのケアワークと類似性を持っている。ケアワーカーは往々にして、セックスワーカーと同様、男性を連想させる職業で働く人々と同じ労働権を享受していない。したがってセックスワーカーの権利を擁護するためには、セックス産業におけるセックスワーカーの労働権を重視し、不安定な労働条件や搾取とに対処する必要性を強調すると共に、セックスワーカーに労働者としての力を与える法的な枠組みを求めなければならない。

 11.​わたしたちは、フェミニスト運動の中にセックスワーカーを包摂することを要求する。セックスワーカーの包摂は、わたしたちの運動にかけがえのない洞察、エネルギー、多様性及び人的流動化の経験をもたらし、ジェンダー、階級及び人種に関するわたしたちの思い込みに疑問を突きつけるものである。セックスワーカーは世界で最初のフェミニストたちであり、その存在がなければわたしたちのコミュニティは弱体化してゆく。