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オーストラリアの報道番組「LATELINE」がセックスワークを特集。「スウェーデン、買春する客を処罰対象に」

オーストラリア放送協会(ABC)
2015年3月13日放送
報道番組「LATELINE」

スウェーデン、買春する客を処罰対象に
http://www.abc.net.au/lateline/content/2015/s4197603.htm

翻訳:

レポーター: Mary Gearin
リード:いわゆる北欧モデルは、セックスワーカーではなく、買春をする客を警察が取り締まるというものである。しかし売春に携わる人々の間からは、このような法律は、実際にはセックスワーカーに不利な状況をもたらすことになっているという声が上がっている。

トランスクリプト

EMMA ALBERICI(キャスター):セックスワークはたんなる仕事のひとつに過ぎないのでしょうか、それとも女性に対する搾取なのでしょうか?その答えは、あなたがセックスワークは全面的に禁止されるべきと考えるかどうかで異なってくるでしょう。
アメリカ国務省は、売春を人身売買と関連づけ、売春は本質的に有害かつ非人間的で、人身売買を促進するものだとしています。

ヨーロッパの中で、スウェーデンは比較的セックスワーカーが少ない国です。1999年にスウェーデン政府は世界で初めて、セックスを売ることではなく、買うことを犯罪化しました。

売春に関するほとんどの統計は信頼できません。この種の調査では人々は本当のことをあまり言いたがらないものです。しかし2010年に行われた調査によれば、この法律が導入されてから、スウェーデンでは街頭における売春の数が半分に減ったと言います。

このいわゆる北欧モデルの導入は、欧州議会で圧倒的多数で可決されました。イギリス選出のメアリー・ハニボール(Mary Honeyball)議員が、スウェーデンの制度を支持する論陣を張りました。

ハニボール議員は、この法律は、女性の身体をモノ扱いする男性を罰するものであり、セックスワークに引き込まれる女性を犯罪者扱いするものではないと言います。

ABCのヨーロッパ特派員メアリー・ギアリン(Mary Gearin)がスウェーデンに飛び、この法律がどのような影響をあたえたかを取材しました。

KARINA EDLAND(セックスワーカー):この仕事は私の人生の中で大きな意味を持っている。すべてがハッピーで楽しいというわけではないけど、私は自分の仕事に誇りを持っているわ。

Mary Gearin(レポーター):理屈の上では、カリーナ・エドランドは何ら不利益を受けることなくセックスワークを自由にできるはずです。スウェーデンは買春と犯罪の関係に目を向けており、客を取り締まり起訴する制度で名高いのですから。

MARIE JOHANSSON(プロジェクトKASTカウンセラー):人が他の人の身体、他の人間を買うなんて、正しいことではないと私たちは考えています。

MARY GEARIN:この法律は、売春女性を保護するとともに、性取引を抑制するはずでした。しかし施行から15年後、それぞれの目的について効果は上がっているのでしょうか?

BEATRICE UNANDER-SCHARIN(女性のシェルター団体ROKS):スウェーデン政府が、女性に対する暴力に関する私たちの考え方を参照して法律にしたことは、成功と呼べると思います。

PEYE JAKOBSSON(セックスワーカーの権利活動家):スウェーデン政府は、PRはとても上手いわね。でも実際に何が起こっているかにはあまり関心がないみたい。

MARY GEARIN:スウェーデンでは売春対策はどのように行われているでしょうか。セックスワーカーは客と取引をすることができますが、客は、もし捕まると50日間の給与に相当する罰金を支払わなくてはなりません。売春のあっせんや売春宿の経営など、別の罪に問われた場合は、また別です。客はさらにカウンセリングを受けなくてはなりません。 一方、セックスワーカーは罪に問われません。この法律を支持する人たちは、売春に関するスティグマはセックスワーカーから客の側に移り、さらに、今ではセックスを買うことは社会的に容認されなくなったと言います。

警察はこの法律を実際どのように施行しているのでしょうか。ストックホルム警察の売春対策課に所属する警察官によれば、古典的なやり方がとられています。

JONAS HENRIKSON(警察官):シフトのたびに巡回に出ることになっているから、摘発は外でだけしているんだ。

MARY GEARIN:ジョナス・ヘンリクソン(Jonas Henrikson)は、ほとんどが男性である客を取り締まるのに、薬物対策課にいた時と同じ手法を使っていると話します。そのやり方とは、法律では自由に仕事をしていいことになっているはずの売春女性たちを監視することです。

JONAS HENRIKSON(警察官):ここで客が近づくのを見はって、いわば、ふるいにかけるんだ。変わったしるしを見つけるのさ。

MARY GEARIN:どういうものを?

JONAS HENRIKSON(警察官):それは言えないけどね。

MARY GEARIN:ヘンリクソンは、張り込みと路上パトロールで、一晩に5人から15人を逮捕すると言います。

JONAS HENRIKSON(警察官):99パーセントの場合は、女の子たちは実際のことを話してくれる。男がいくら払って、どんなふうにしたか。男の方もたいていは罪を認めるよ。

MARY GEARIN:あなた方は女性たちを監視して彼女たちがしていることを取り締まっているのに、女性の方は犯罪者じゃなくて男性の方が犯罪者になるというのは、矛盾があると思いませんか?

JONAS HENRIKSON:そうだね、最初は矛盾があると思った。でも後から理解したんだ。この法律は、男性が女性からセックスを買うのは、女性に対する男性の暴力と同じだということを法律に落とし込んだんだ。そういう理由から見れば、女性が利用されていて、金を得るために自分を売らなくちゃいけないというひどい状況にいるときに、女性を処罰するのが公平なことなのか。答えは明らかだと思う。

MARY GEARIN:ヘンリクソンは、この法律によって、スウェーデンは人身売買業者にとって魅力的な場所ではなくなり、セックスワーカーと警察の関係は強化されたと言います。

JONAS HENRIKSON:われわれは女の子たちとコミュニケーションをとっているし、彼女たちも警察をよく信頼してくれていると思う。

MARY GEARIN::しかしカリーナによれば、状況はまったく違います。

KARINA EDLAND:一度バカをやってレイプされてしまったことがあるんだけど、警察は呼べなかった。警察に目をつけられたくなかったのよ・・・だって警察は、実際は客に目をつけてるわけじゃない。客を捕まえるために、私たちに目をつけてるのよ。

MARY GEARIN:カリーナが顔を隠している理由は、結局のところ、彼女たちの商売を根絶やしにするための法律によって、スティグマが強まっているからだと言います。

KARINA EDLAND:いつも仲間に言うのよ、私たちを一列に並ばせて撃ち殺した方がマシだって。だってスウェーデンの国は、私たちにここにいてほしくないんだから。

MARY GEARIN:元セックスワーカーのペイエ・ジェイコブソン(Peye Jakobsson)は、この制度は売春女性をいっそう危険にさらしていると、はっきりと批判しています。

PEYE JAKOBSSON:売春と家屋について取り締まる3つの法律があるのですが、もしも人に貸した部屋で売春が行われた場合、部屋の所有者は、売春女性を追い出すよう強制されるか、さもなくば売春あっせんで起訴される危険があります。

一方、自分で所有するアパート内で売春を行った場合には、所有権を失うことになります。

このため、買春客を処罰する法律の下で売春をする方法は、路上で売春するか、あるいは客の家に行くかという2つしかありません。しかしこの2つの方法は、売春女性にとってはよりリスクが高くなるのです。

MARY GEARIN:売春をしている女性たちに対し、より手厚い社会保障の支援が必要であることについては、すべての人々が合意しているようです。しかし社会保障制度には、特に売春をしている母親について、いまだに偏見があるようです。

BEATRICE UNANDER-SCHARIN:売春をしている女性たちの状況は、DVを受けている女性たちと同じです。DVを受けているからと言って悪い母親ではないのと同じように、売春をしているからと言って悪い母親ということはありません。そのような社会の態度は変える必要があります。

MARY GEARIN:しかしベアトリス・アナンダスカーリン(Beatrice Unander-Scharin)は、女性シェルターで働いた経験から、売春は間違ったことであり、したがってこの法律は正しいと確信しています。

BEATRICE UNANDER-SCHARIN:私が見聞きしたほとんどすべてのケースでは、女性たちは選択とは言えないような選択をしていました。ほかに選択肢がないような中で行われる選択は、本当の選択とは言えません。

MARY GEARIN:この法律が実際に売春の需要を減らすことに成功したかどうかは明らかではありませんが、法律の支持者たちは、ストックホルムの売春街を指して、以前とは大きく変わったと指摘します。

マリー・ジョハンソン(Maree Johansson)は、法律がもたらした成功は、数字ではなく人々の態度からも明らかだと言います。彼女は買春客とセックスワーカーの両方に対してカウンセリングを提供していますが、売買春に対する文化が根本的に変化していると話します。

MARIE JOHANSSON:私は幸せな買春客にも、幸せなセックスワーカーにも会ったことはありませんね。

MARY GEARIN:でもそういう人たちに会うのはあなたの仕事ではないわけですよね?

MARIE JOHANSSON:そうですね。でもともかく、多くの買春客とセックスワーカーに会っているのは確かです。そしてこの人たちは助けを必要としているし、法律はいいことだとも考えているのです。

MARY GEARIN:多くの国がこのスウェーデンモデルに倣おうとしています。しかしカリーナは、この制度がセックスワーカーにあたえる保護とは、実際には疎外になっているのではないかと警告しています。

KARINA EDLAND:スウェーデンは私たちのことなんかどうでもいいのよ。私たちが国にいることを恥だと思っているのよ。

(※この番組のその他の動画の翻訳は順次UPしていきます。)