Health handbook by APNSW
〜性の健康のアドバイス〜

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<はじめに>

たくさんの人が、私たちをただの女装したゲイだって思ってる。でもそうじゃない、私たちはトランスジェンダー女性なのよ。自分自身の感覚とか生き方とかはゲイの人たちとは随分違う。

トランスジェンダー女性にはいろんな年齢の人がいるし、容姿や性格や個性なども人それぞれ。世の中のあらゆる人たちがそうであるように…。 けれど、私たちの多くは自らのジェンダーとかセクシャリティのことで偏見を持たれたり差別されたりしている。 時には家族にも否定されたり、公然で暴力を受けたりもする。

こうした扱いは、私たちの人生におけるいろんなチャンスを奪っていく。たとえば、学校で勉強したり、一般の仕事に就いたりするチャンス。セックスワークは、しばしば私たちが生計を立てる唯一の現実的な選択肢になる。

中には、辛さや孤独感からお酒やドラッグに手を出す人もいる。 HIVに感染して、周りの人たちから冷たくあしらわれる人もいる。

このハンドブックには、トランスジェンダー女性の多くが生きていく上で不安を抱える健康(ホルモン、HIV、性感染症など)のことや、人権のこと、社会福祉のことについての情報が書かれています。

〜ソムチャイさんのお話〜

5歳の時、私は自分の体に違和感を感じました。 私は姉の服を着ました。そっちの方がしっくりきたからです。母親が用意した男の子の服を着ようとしなかったので、両親はとても怒って私をぶちました。

学校に通う年齢になると、さらなる問題が起こりました。学校の先生は私を男の子のクラスに入れたのですが、私が女の子たちと一緒にいることを望んだからです。

そのクラスでは、男の子たちは私をいじめ、両親のように叩いたりもしました。 11歳の時、「誰も私のことを理解してくれないんだ。」と思って、家を飛び出して街へと逃げ込みました。

街には私と同じような境遇の人がいました。彼女は私をなぐさめ、あるがままの私を受け入れてくれたのです。 彼女たち、いわゆる「トランスジェンダー女性」の人たちは、生活するために”性”を売っていました。

それから後、彼女たちに働き方を教えてもらい、私もセックスワークを始めるようになったのです。 (以上)

”性”の表現は、その人の人生に大きく関わる問題です。 トランスジェンダーは、単に服を着替えるみたいに性を変えているだけではありません。

”性”の表現は、自分自身の核となるようなものなのです。でも、女か男か、どちらか一方になる必要はありません。 私たちはそれぞれ、自分の思い描く女らしいイメージにフィットするように、自分の姿を変えることを許されるべきなのです。

<性の健康>

性の健康とは、セックスに関わる、身体的、精神的、社会的に健康である状態を意味します。トランスジェンダーがみんな、同じようにセックスをするわけではありません。

男性とのアナルセックスが好きな人もいれば、それを嫌う人もいます。 お金を稼ぐために、したくないセックスをする人もいます。

女性とのセックスが好きな人もいます。 私たちは、自由に相手を選んだり、それぞれ好きなセックスをする権利を、お互いに尊重するべきなのです。

「性の健康」は、自分の体を自分自身の感覚に合うように変えることでもあります。私たちの多くは、まず最初に、より女性らしくなることに興味を持ちます。

そして、女性用の服を着たり、化粧をします。私たちの多くは、自分の体をより女性らしくするために、ホルモンを投与したり、外科的手術を受けたりします。

これらは、自分自身の感覚を補うための手段であったりします。 私たちの中には、そういうことをしない人たちもいますが、その人たちも、自分の性別を変える多くの女性たちと同様に、正当なのです。

私たちは、美しくなるためにとか、自信をつけるために、自分の体をいじくる必要はありません。 もし私たちが、すでに自分のことを女性だと思っているのなら、無理に体を手術する必要はありません。

性転換手術をしたり、戸籍を変えたりしなくても、もし女性らしく見えるのであれば、私たちは女性として受け入れられるべきなのです。

<女性らしくなること>

住んでいる地域によって、ホルモン投与や外科的手術が受けられる医療機関へのアクセスのしやすさは違ってきます。 ほとんどの地域で、ホルモン療法には国や民間の保険が適用されていません。

女性化するためのホルモン投与や手術を受けるには、高額の費用がかかる可能性があります。 トランスジェンダー女性がセックスワークをする理由のひとつが、そのような高額の費用を稼ぐためなのです。

通常、もしあなたが内分泌科の医者(ホルモンの専門家)やトランスジェンダーのホルモン療法に詳しい医者に診てもらうならば、初診料や身体検査や臨床テストに、高額の費用がかかります。 それから、3ヶ月後、半年後、1年後にある外来受診では、臨床テストがほとんどなく、あまり費用はかかりません。性転換手術や美容整形手術は、多くのトランスジェンダーにとってあまりに高額で、利用できないことが多いです。

手術を受けたり理解のある医者にかかるためには、費用や交通の便の問題があることから、私たちの中には、自ら医者になったり、先輩のアドバイスに従う人がいます。

私たちはしばしば、自分自信や友人に対して何らかの処方をしたり、適切でないサービスを利用したりします。 これはとても危険な事態になる可能性があります。なぜなら、ホルモンの使用には、命に関わる多くの副作用があるからです。

ホルモンやボトックス、オイルやシリコンなどを注入することは、しばしば感染症や体に何らかの傷あとを残す原因となります。

ねぇ先輩、ホルモン投与のことで何かアドバイスはありますか?

トランスジェンダー女性の先輩は、トランスジェンダーにホルモン療法をした経験のある医者にかかることを勧めます。 なぜなら、エストロゲンの過剰摂取は命に関わるからです。

けれど先輩は、そのような経験のある医者や、トランスジェンダーへの理解のある医者が、あなたの住む地域の近くにはいないかもしれないということを、理解しています。

先輩は、「ホルモンをより多く投与することは、より早く効果が出ることにはならない。」ということを伝えようとしています。 ホルモンの効果が現れるには時間がかかります。

ホルモンの過剰摂取は、肝臓にダメージを与えるなどの原因になります。 そうなれば、あなたの体はホルモンを処理出来ずに、その後ホルモンは効かなくなってしまうでしょう。

最も効果的なホルモン投与の方法は、エストロゲンと抗アンドロゲンの組み合わせです。 エストロゲンは、胸を成長させたり、乳首を大きくさせて、あなたがより女性らしくなるのを助けてくれます。

抗アンドロゲンは、あなたの体で作られる、男性ホルモンの効果を抑えてくれます。 たとえあなたが睾丸を摘出していても、抗アンドロゲンは、顔や体の毛を減らしてくれます。

私たちの中には、エストロゲンの錠剤をキャンディーのように食べる人がいます。 女性ホルモンをたくさん投与するほど、より早く女性化すると信じている人もいます。

しかし、私たちはホルモンを過剰摂取していないか、医者に相談するべきなのです。 ホルモンは、あなたの体をすぐに女性化することはありません。

女性ホルモンをたくさん投与しても、女性化は早まったりしません。ホルモンの効果が現れてくるには、1年以上かかるでしょう。 ホルモンの影響を受けない箇所もあります。ホルモン投与では、骨格や顔、身長、手足の大きさなどは変わりません。

ホルモンを過剰摂取すると、深刻な状況に陥ってしまいます。そして、もしホルモンの過剰摂取で肝臓を壊してしまえば、あなたの体はホルモンを処理出来なくなってしまうでしょう。

このことは、あなたが他の薬を服用していたり、お酒をたくさん飲んだり、たくさんタバコを吸っている人であるならば、、特に重要なことなのです。 エストロゲン投与には、多くの副作用があり、中には命に関わるものもあります。

一般的に、エストロゲンの副作用には、情緒不安定、頭痛、吐き気、めまい、にきび、色素沈着、高血圧などがあります。

その他にも、疲労感、うつ病、肥満、血液凝固の異常、心臓疾患、糖尿病、胆石、肝臓疾患、骨粗しょう症、老化、脳障害、生殖不能などの副作用もある。

過度のエストロゲン投与は、血液凝固や脳卒中を引き起こすかもしれません。 もしあなたがHIVに感染していれば、これらの副作用について考えたり注意を払うことは、特に重要です。 このように、ホルモンというのは、軽々しく手を出すべきものではないのです。

その人に合った服用量は、年齢や、体の大きさや、喫煙の有無や、睾丸の有無などによって異なります。 エストロゲンが、抗アンドロゲンとの組み合わせで、どのくらい効果があるかを考えることも重要です。

抗アンドロゲンは、男性ホルモンを抑制する手助けをする一方で、女性ホルモンの働きを補います。 避妊薬は、女性ホルモンやホルモン療法と同じではないんだと覚えておくことも重要です。

避妊薬は、副作用を増加させるプロゲステロンを含んでおり、抗アンドロゲンの提供もしません。 そのため、避妊薬は、女性化するためのベストなホルモン療法ではありません。

もし、あなたが医者にかかってホルモン療法をうけているのならば、それは避妊薬を飲むよりも良い選択なのです。 私は、バーで歌手をしているXさんに出会いました。 彼女は、私が今まで見た中で最も美しいトランスジェンダー女性でした。

私は彼女のように美しくなりたかったので、彼女にどのホルモンをどのくらい投与しているのかを尋ね、同じように投与しました。 しかし、酷い頭痛と吐き気が続くようになりました。

ある友人は、私に何を投与しているかを尋ね、女性ホルモンを過剰に投与していると私に忠告しました。 それから、私は投与量を減らして、体調が良くなりました。

[標準的なホルモン療法の手順 (Tom Waddellクリニック)] かかりつけの医者がホルモンを処方する際、その組み合わせは下記のようなものを参照したらよいでしょう。

ねえ、先輩。ホルモンを投与したらすぐ胸は出てくるのですか?

個人差があります。大抵2,3ヶ月で胸が出始めるのですが、1年以上かかる人もいます。ホルモン剤の錠剤やパッチは、注射よりも安全かもしれません。注射は錠剤よりも効き目が遅いため、最後の手段にするべきでしょう。

注射針の再利用や使いまわしは、感染症の原因となったり、HIVや肝炎やMRSA(多剤耐性黄色ブドウ球菌)のような病気を広める可能性があります。注射針の使いまわしは、最もHIVを感染させやすいのです。そのため、もし注射針を使いまわすのであれば、必ず注射針の消毒をしましょう。

ねえ、先輩。どうやって、安全にホルモン剤を注射してるのですか?

注射よりもピルを使うほうが安全ですが、注射をするならば、下記のことを必ず守りましょう。

1. ホルモン剤の容器の口を、アルコールで消毒する。

2. 注射器にホルモン剤を1cc(多くの医者たちが勧める適用量)入れる。

3. 注射針を上に向け、中から空気を押し出すために、注射器を軽く指で押す。

4. ホルモン剤が注射針から少し出るのが見えるまで、全ての空気を押し出す。

5. アルコールで、注射する箇所を消毒する。

6. 静脈や骨がある箇所を避ける。

7. 太ももに注射する場合は、お尻と膝の間の、表側の太ももに注射する。

8. 注射針を垂直に指す。斜めに指したり、角度をつけて指さない。

9. 注射針を指したら、血液の逆流を防ぐために、注射針を少し引く。

10. もし注射器内に血液が見えたら、血管を傷つけたということなので、注射針を抜き、他の箇所で試みる。

11. その箇所を必ず消毒し、上記の手順を守る。

ねえ、先輩。どのやって針を消毒してるのですか?

もし注射針を共有しなければならない場合、まず第一に、注射針を消毒します。

1. 漂白剤を注射器内に入れる。 2. 指で注射器を軽く叩く。 3. 1分間、注射器を振る。 4. 漂白剤を押し出す。 5. それから、清潔な水で少なくとも2回、注射器を洗う。 6. 他の人が注射器を洗うのに使った水を、使いまわしたり再利用しない。

私たちの多くが専門家の助言を受けていないので、私たちは、結果が分からないまま外科的手術を受けることがある。トランスジェンダー女性は、あらゆる性に関わる外科的手術の前に、女性ホルモンを投与すべきでしょう。

女性ホルモンの効果が自分には望ましくないと思った人は、外科的手術を諦めたり、ホルモン投与をやめることさえ有り得るでしょう。女性ホルモンの投与で胸が大きくなり、豊胸手術の必要が無い人たちもいます。時には、信頼のできない医院で豊胸したり、生殖器の手術を受ける人たちもいます。

しかし、望ましくないことは、外科的的手術に求めていたことが、傷あとや醜さとなってしまうことです。時には、不衛生な手術台の上で死んでしまう人たちもいます。

外科的手術の後に期待するものは、人それぞれ違います。たくさんのいろんな人たちに、どの医者が安全かや、どのくらい費用がかかるかということを話し、その結果を見ましょう。

必ずたくさんのいろんな人たちに相談した後で、自分のことを決めましょう。友人1人だけのアドバイスに従ってはいけません。

私たちが本当に求める過程は何なのか、気をつけて選択しなければなりません。これらには、より女性らしく、またはより美しくなるための、顔の脱毛であったり、のど仏を取るといった手術の過程があてはまるでしょう。

私たちの多くが、胸を大きくしようとします。新しい膣を作ることは、最も複雑で危険な外科的手術です。造膣することを強く希望する人もいますが、しばしばその結果に満足しないということがあります。

たとえば、性的な絶頂感を得たり、ふつうにおしっこをする能力を失うかもしれないのです。多くのトランスジェンダー女性が、新しく作った膣をどう手入れするか知りません。たとえば、水を入れて洗うことなどです。

また、新しく使った膣を開くようにするためには、ディルドで拡張しなければなりません。十分に膣の傷が治る前にセックスをすると、泣くほど痛いことがあります。

最後に、多くの新しく作った膣は、自ら濡れないので、セックスする時は、コンドームと一緒にローションを使わなければなりません。

外科的手術の後、どうやって新しく作った膣のお手入れをするのか、必ず知っておきましょう。もし、自分の新しく作った膣を拡張しないと、膣が縮んだり、セックスの途中で問題が起こる可能性があります。

外科的手術の後、自分が女性になったように感じるかもしれませんが、それでもまだ、体内にある前立腺などのように、あなたには男性の部分が残っています。私たちは、女性の部分も男性の部分も、どちらも気にかける必要があることを覚えておきましょう。

手術を受けた後で、自分の人生は実際に良くなるわけではないと感じるトランスジェンダー女性もいます。その上、多くのトランスジェンダー女性は、外科的手術を受けた後で、パートナーたちを失います。なぜなら、そのパートナーたちは、ふつうの女性としてよりも、トランスジェンダー女性として、彼女たちに興味を示していたからです。 女性ホルモンは私たちの気持ちを変えますが、それは手術も同様です。手術はしばしば、間違ったうぬぼれを生むと覚えておくことが重要です。本当に大切なのは、自分自身をどう感じているかという、内面の部分です。

自分を知り、自分を愛するということは、生涯続く過程なのです。私たちは、自分の美しさよりも、自分の健康のことを優先しなければなりません。リスクや適切な方法を知らずに、ホルモン投与や、コラーゲンやシリコンの注入や、外科的手術を受けてはいけません。

先輩はこう言います。

「女性の部分と男性の部分、両方のガンの検査が必要だってことを忘れずに!」女性ホルモンを投与しているトランスジェンダー女性は、一般女性と同じように乳ガンの検査が必要です。性転換手術前のトランスジェンダー女性は、睾丸ガンの検査が必要です。

性転換手術を終えたとしても、トランスジェンダー女性は、同年代の男性の基準と同様の前立腺ガンの検査が必要です。もしアナルセックスをすることがあれば、肛門ガンの検査を受けるべきです。特に生殖器付近にイボがある人は、この検査を受けるべきです。

<HIVと性感染症>

トランスジェンダー女性として、私たちはHIVや性感染症の高いリスクにさらされています。私たちは、さまざまなグループの中でも、最もHIVの割合が高いのです。

このことは、私たちの多くが、すでにHIVと共に生活していることを意味します。これは、私たちの選択でも無ければ、悪いことをした報いでもありません。

私たちしばしば、人生の中で直面する社会的な差別ゆえに、高いリスクにさらされます。これは、セックスワークへと導く雇用差別や、医療を信用したり求めることを妨げる医療現場の差別や、偏見やレイプや暴力によって自尊心を無くすことを含んでいます。

先輩はこういいます。

「私たちが、どのくらい、すでにHIVに感染しているか、見てちょうだい。」

インド: チェンナイ(45%)、ムンバイ(40〜56%) タイ: バンコク(11.5%)、チャンマイ(17.6%)、プーケット(11.9%) カンボジア: プノンペン(17%) インドネシア: バンドゥン(14%)、スラバヤ(25.2%)、ジャカルタ(34%)

ねぇ先輩、コンドームはどのように使えばいいですか?

1.使用期限を確認しましょう。

2.つめでコンドームを傷つけないように注意して、コンドームが入っている袋を開けま   しょう。

3.熱や圧力でコンドームが損傷していないか、確かめましょう。

4.精液を溜めるために、コンドームの先端にスペースを残しましょう。ただし、空気が   入らないようにしましょう。

5.ペニスの根元まで、コンドームを最後まできちんと下ろしましょう。 油やグリース(油脂)が入っていない潤滑剤を使いましょう。ワセリンや油などは、ラテックス(伸縮性にとんだ薄い材料)を損傷させるでしょう。

水性の潤滑剤は、しばしばとても早く乾燥する。もし乾燥したら、水か唾液を加えましょう。コンドームを持っていなければ、当然使うことは出来ません。コンドームを持ち運びましょう。もしコンドームを買うことが出来なければ、挿入行為なしのセックスが出来ます。

射精の前にペニスを体外に出すことで、HIVに感染するリスクは減らせますが、淋病やクラミジアや梅毒などに感染するリスクは減らせません。安全なセックスを工夫をしましょう。

時々私たちは、愛し合っていることを確信できるので、パートナーたちにコンドームをつけて欲しくない。しかし、なぜ命を賭ける必要があるのか?

あなたのパートナーが既婚者だとか異性愛者だとかいうことは、その人がHIVや他の性感染症に感染していないということと、何の関係も無い。

私たちを傷付けようとする人たちがいる。可能なら、最初に公けの場所で会いましょう。友人に誰と会うかを告げて、後で安全を確認してもらいましょう。

相手があなたにドラッグを使おうとしていないか、気をつけておきましょう。自分の飲み物がいつも見えるところにあるということを確認しましょう。もしあなたが到着する前に、すでに飲み物がある場合は、それを疑うべきです。直観を信じて、もし何か変だと感じたら、その場を離れましょう。

先輩はこう言います。お酒やドラッグには気をつけて。

ドラッグを注射する時に針を使いまわすことは、HIVや肝炎のような病気を広める可能性があります。しかし、お酒を飲んだりドラッグを使用することは、判断力を失ったり、自分自身を守れない可能性があるため、同様に危険なことです。

多くの男性が、あなたをお酒で酔わせたり、あなたにドラッグを使うことで、彼らにとって都合の良い状況にしようとするでしょう。あなたの限界を知り、その限界を超えてしまわないようにしましょう。

気持ちよくないとか、雰囲気を台無しにするとか、ダサいというような理由で、多くの男性がコンドームを使おうとしません。コンドームを素早く、焦らず、僅かな間で自然につけられるように、練習しましょう。

黙ってつける方法。これは、コンドームを使うことを相手と話す必要がないやり方です。相手が性的興奮を保てるように、相手のからだに触り続けるのです。もし相手がずっと刺激され続けていれば、おそらくコンドームを使うことが気にならないでしょう。

ねぇ、先輩。コンドームを持ってない時は何が出来ますか?

1.工夫しましょう。次回のために”セーブ”するなど、ペニスの挿入を伴う

セックスを延期してみたり、テレフォン・セックスをしたり、相手をマッサージしたり。

2.ペニスの挿入を伴わないセックスをしましょう。手で相手をイカせたり、太ももや胸でセックスしたり。

3.口を使いましょう。

4.もし他に選択肢が無ければ、中出しさせないこと。射精の前に相手のペニスを抜き出すこと。

コンドームは、性感染症の拡大を防ぐ重要な道具です。

それは、HIVや淋病やクラミジアや梅毒やヒトパピローマウイルス(イボ)やヘルペスやその他の病気に感染するリスクを減らします。HIV検査や性感染症検査もまた、リスクを減らす重要な行為です。

私たちはしばしば、過去にひどい扱いを受けた経験から、クリニックや病院に行く気になりません。しかし、あなたやパートナーがHIVに感染しているかどうかを知る唯一の方法は、検査を受けることなのです。

多くの場所で、HIV検査は無料・匿名です。多くの検査が、現在は血液を必要とせず、20分ほどで結果が分かります。あなたの行為を評価し、HIVやその他の性感染症のリスクを減らすための力になってくれるカウンセラーがいるクリニックもあります。

HIV検査で陽性になることは、死ぬことを意味しないということも覚えておきましょう。多くの非常に有効な治療が利用できます。多くの場所で、治療は無料または低コストで提供されています。

コンドーム無しのセックスの後で、不安になったことはありますか?なぜ、またそういう思いをしたがるの?

ねぇ、先輩。性感染症に共通の症状ってあるのですか?

1.放尿する時の、痛みや焼けるような感覚。

2.ペニスや肛門やヴァギナから膿が出る。

3.頻繁な、または濃い色の尿。

4.性器の辺りやでん部や太ももの内側や腹部の、痛みまたはかゆみ。

5.ペニスや睾丸や肛門やヴァギナや性器の辺りの、痛みやイボや水ぶくれやこぶや腫れ。

6.手のひらや足の裏の発疹。

7.肌や白目の部分が黄色くなる。

もしこれらの症状があれば、きちんとした医者に相談するべきです。自分自身で治そうとしてはいけません。

HIVと共に生きる

アジア太平洋地域で、HIVと共に生活している多くのトランスジェンダー女性が、自分がHIV陽性だということを知りません。無償のカウンセリングや検査は、私たちに必要なことを行ったり、気にかけたりすることは、ほとんどありません。

医療現場での不快な経験もまた、検査を受け難くさせています。さらに、HIV陽性だと分かったり、HIVと共に生きていくことは、私たちの望まない偏見がさらに増えることを意味します。

私たちは、人生を限られた時間だと感じているかもしれない。私たちの多くが、事実を知らない方がいいと考えているかもしれません。しかし、現代のHIV治療は、何もしない場合よりも、何十年も長く生きさせてくれます。

また、HIVと共に生きることは、結核のような他の病気に罹りやすいことも意味します。そのため、HIVと、それに伴う病気のどちらも治療することが重要なのです。最新の薬を用いた、費用の安い、または無料の治療が受けられる場所は、アジア太平洋の各地で増えてきています。

ねぇ先輩、ARV(HIV治療に用いられる、抗レトロウイルス薬)を投与してても、ホルモンは投与していいの?

HIVとホルモン療法を同時に受けることは可能だが、それらには相互作用があります。HIV治療薬が異なれば、ホルモンに与える影響も異なるため、この分野において経験のある医者に相談しなければなりません。

HIV治療薬を服用しながら、ホルモンを過剰投与して、命を落とした人もいるのです。

医療現場へのアクセス

私たちはしばしば、クリニックや病院やその他の医療環境において、差別されるかもしれないと感じることから、健康上の問題が起こったとしても、治療を受けなかったり、治療を遅らせてしまうことがあります。

医療現場で働く人々が、私たちをクスクス笑ったりうわさ話をすると、私たちはもう、その場所に戻ってこようとは思わなくなってしまいます。時々私たちは、過去に受けたひどい扱いから、重大な問題が起こった時でさえ、医療の助けを借りることをためらってしまいます。

しかし、私たちは、私たちのニーズに配慮してくれる医者を見つける努力をすべきです。もし友人が、どこへ行けばいいか教えてくれるのなら、聞いてみましょう。 しかし、ただあなたに親切にしてくれたということと、その医者がトランスジェンダー女性の健康について知識があるということとは、関係がないということを覚えておきましょう。

そのため、トランスジェンダー女性を治療した経験があり、なおかつ配慮をしてくれる医者かどうか、確かめましょう。

<セックスワーク>

トランスジェンダー女性には、あらゆる社会的階級の人や、教育レベルの人がいます。しかし、私たちは一般的に差別に直面することから、私たちの雇用の選択肢はしばしば、飲食業や服飾・美容関係や市場での仕事や宗教上の役割などに限定されます。

このような選択肢の幅が与えられるので、私たちの多くは、生活のために、セックスワーカーになることを選んだり、セックスワークに頼ったりするのです。

私たちはまた、退職した親や、きょうだいの教育や、自分たちの子どもの成長を支えるという道徳的義務から、セックスワークを行います。

しかし、私たちの全てがセックスワーカーではありません。そのため、私たちが皆セックスワーカーであるという固定観念を持ってはいけません。

セックスワーカーは、HIVや性感染症、ドラッグの使用やその他の健康上の問題に関して、特にリスクを持っています。私たちはまた、男にペニスを挿入するというような、楽しくないことを、お金のためにすることもあるでしょう。

不幸なことに、不平等な待遇や自暴自棄になることは、セックスワーカーを、コンドームやその他の保護手段がないサービスの提供へと、導いてしまう可能性があります。その上、愛は、相変わらず私たちの最も大きなリスク要因のひとつなのです。

コンドームを使うことで、客から距離をとれることが喜ばしい一方、コンドームを使わないことで、自分達のパートナーに情緒的な愛を示すことが、一般的に好まれます。

もし男の子を買うなら、彼にコンドームを使うべきだわ。

もしコンドームを持ち歩いてたら、うまく行かなかったり、客がつかないと思っていたわ。でも、友達はいつもコンドームを持ち歩いてたし、それで何の問題もなかった。だから、今、私もコンドームを持ち歩いているの。

セックスワーカーはまた、とりわけ客の手による暴力を受けやすいです。私たちを苦しめる犯罪者たちは、私たちが警察に護ってもらえないことや、警察官自身や道徳運動家から苦しめられることを知っています。

そのような暴力や、私たちを護ってくれるはずの存在の欠如は、身の安全に対する基本的人権を侵害しているのです。

さらに、警察はしばしば、セックスワークをしているという理由で、積極的にトランスジェンダー女性を標的にして逮捕します。たとえセックスワーカーでない場合でも。トランスジェンダーであり、セックスワーカーや観光客や学生や信者たちが行き来する場所を歩いているだけで、逮捕の原因とされる可能性があります。

コンドームを持ち歩くことも、警察によって、セックスワークをしている証拠にされるので問題となる可能性があります。コンドームを持っている時に、それを隠さなければならない場合があるでしょう。

安全にセックスワークをするヒント:

客と出かけた後で、誰かに確認してもらうこと。その人に、電話をかけたり、ドアをノックしてもらうべき時を告げておくこと。

もし個人売春であれば、単独で働かないこと。必ず働く地域に友人を持っておくこと。もし危険だと感じたら、口笛を使うこと。あらゆる問題の写真や動画を撮るために、携帯を使うこと。

もしお店で働くときは、警察が来たことなど、店の外で起こっていることに気づけるように、ドアのそばにいること。

<人権>

人権とは、身分、人種、ジェンダー、性的指向、職業やその他の尺度に関わらない、全ての人の安全や尊厳や平等に関するものです。私たちは誰でも、信条の自由や、暴力を受けずに生きられるといった、基本的人権を持っています。

しかし、トランスジェンダー女性として、私たちはしばしば、乱暴などの直接的形態においても、生きていく上での障害などの間接的形態においても、暴力の被害者となります。

多くの人々が、レイプや性的虐待や身体への乱暴は、私たちが耐える必要のない暴力であると認識しています。しかし、私たちが日々、暴力と共に生活していることに気づいている人はほとんどいません。

偏見や差別のような社会的な問題は、自分は何者かということを形成する上で、重大な役割をします。家庭や学校や宗教的共同体の中で、自分のことをからかわれたり、いじめられたり、差別されるかなり早い段階から、私たちの人生は変わります。

私たち個人の安全は脅かされています。私たちが、教育を受けたり職に就いたりする機会は限られてしまいます。私たちの健康は蝕まれていきます。私たちは、まともに社会参加することを否定されます。

差別は、私たちの人生のあらゆる角度に影響を与えます。 私たちに関する肯定的な固定観念があるときでさえ、これらは有害になり得ます。たとえば、私たちには創造力があるという考えは、しばしば私たちを、エンターテイメントやファッションや美容に関わる職業へと分類してしまいます。

私たちの中には、美容師やデザイナーやパフォーマーになりたいと思っている人がたくさんいますが、そのような職業に付くことだけを制限されるべきではありません。

トランスジェンダー女性として、私たちは日々の生活の中で、特別な機会に直面します。たとえば、外国旅行をする時、私たちはしばしば、どうしてパスポートの性別が、見た目の性別と違うのかについて、足止めされたり質問されることがあります。

多くの国では現在、自分自身がどういう生活をしたいかを反映して、戸籍やパスポートの内容を変更することが許可されています。これは大きな変化であり、結婚や養子縁組を含め、さらなる権利が付加されたのです。

私たち全員が、まともに市民権を得たり、尊重されたり、暴力・偏見・差別を受けない生活を送る権利を持っている。

私たちは、特別な扱いを求めているのではない。私たちは、他のみんなと同じような、公平な扱いを求めているだけだ。

社会的な支援を力づけ

社会的に受け入れられるということは、自己を受け入れることに始まり、自己を受け入れることは、社会的に受け入れられることをもたらします。

私たちは、自分たちや自分たちの共同体を尊重する必要があります。私たちは、家族に受け入れられるように働きかける必要があります。私たちは、社会における平等な立場を要求する必要があります。

社会における変化は、私たちの健康に影響を与えます。なぜなら、健康は、私たちの社会における立場に関連しているからです。

そのため、私たちは、平等な権利と社会的な受け入れを達成することにおいて、戦ったり、他人の支援を求めなければならない。このことは、私たちが、自分自身や自分たちの共同体を、愛したり大事にすることを学ぶだけでは達成されません。私たちはまた、団結し、変化を求めなければなりません。

法律に基づく政治活動や、社会の態度や、トランスジェンダー女性の経済的な状況を変えることは、私たちが生産的で満足できる生活を達成するためには不可欠です。

生活は、生きていくために日々泥沼にはまるものではなく、私たちにうまく生きていく機会を与えるものなのです。

私たちは皆、家族という集団の中で生まれるが、トランスジェンダーという理由で、家族から除け者にされることもある。 私たちは、お互いのことを、新しい家族のように考えなければならない。私たちは、最も良い状態であるために、出来る限りお互い助け合う必要がある。私たちは、自分たちの健康や、自分たちの共同体の幸福に対して、責任を持つ必要がある。

私たちは、自分たちの共同体が強くあるために、自分自身を護る必要がある。

その他の情報資源

Standards of Care and Professional Guidelines for Clinicians.

The World Professional Association for Transgender Health,Inc. (WPATH): Standards of Care, 6th version ? Minneapolis, MN, USA http://www.wpath.org/publications_standards.cfm

National Health Service: Guidance for Gps and other clinicians on the treatment of gender variant people(10 March 2008) http://www.pfc.org.uk/files/GuidanceForGPs.pdf

Tom Waddell Health Center: Protocols for Hormonal Reassignment of Gender (24 July 2001) ? San Francisco, CA,USA http://www,sfdph.org/dph/comupg/oservices/medSvs/hlthCtrs/TransGendprotocols122006.pdf

Sherbourne Health Centre: Guidelines and Protocols for Comprehensive Primary Care for Trans Clients(April 2009) ? Toronto, ON,Canada http://www.sherbourne.on.ca/PDFs/Trans-Protocols-Announcement.pdf

Agender New Zealand Incorporated and Transgender.co.nz: Transgender Guide for Health Personnel and Transgender women 1st Edition 2009 ? New Zealand http://www.agender.org.nz/AGENDER%20NEWS.htm

Trans Care Project: Transgender Primary Medical Care: Suggested guidelines for clinicians in BC(January 2006) ? Vancouver, BC Canada Several additional guides on hormone therapy, adoloscence, advocacy, etc. http://www.vch.ca/transhealth/resources/careguidelines.html

International Union against Sexually Transmitted Infections(IUSTI) Asia Pacific Branch: Clinical Guidelines ...for sexual health care of Men who have Sex with Men (November 2006) http://sexologyasiaoceania.org/library/MSM/MSM.Clinical.Guidelines.IUSTI.AP.Nov.2006.pdf

各地域にある情報資源

無料または安い費用で、HIVやその他の性感染症の検査や治療が出来たり、社会的な支援がある場所。

製作・著作

Text by : Dredge Byung'chu Kang-Nguyn, MA, MPH/PhD Candidate.

Edited by: Andrew Hunter

List of Contributors (in alphabetical order by first name): Aldo Saragi, Amitave Sarkar, Ayer Chengtrakun, Amornsak Jaruphan, Champa SelaSam, Harry Prabowo, Hua Boonyapisomparn, Jesse Koh, Khartini Slamah, Nada Chaiyajit, Nita Ly Tieng, Note Jetsada Taesombat, Pisey Ly, Prempreeda Pramoj na Ayutthaya, Rina Elisha Kor, Senee Vongsavan, Somelith Detthongthip, Sophea Chrek, Sulastri Ariffin, and Thitiyanun Nakpor.

Somchai's Story reprinted with permission from Clinical Guidelines ...for sexual health care of Men who have Sex with Men, IUSTI Asia Pacific Branch, November 2006.

Developed and printed by the Asian Pacific Network of Sex Workers(APNSW).

Funding provided by amfAR: The Foundation for AIDS Research.

Printing Date: January 31,2010. v Photos by: Dredge & APNSW.

Design by: Dale C.Kongmont

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